
RolleiFlex
きょう しごとの用事で うちに来た人が
サクを見ながら 言った。
「よく いろんなコトバが わかりますねぇぇ...。
なんか 特別な教え方とか しました~??」
うーん...べつに特別なことは..と言いかけて、
あ、そういえば、と 思いだしたことがある。
サクが まだ赤ちゃん犬のころ、
やってみたことが あったっけ。。
ヘレンケラーが 「water」というコトバを悟ったときの
あの有名な 逸話...
手にしたたる水の感触を感じてるときに
手に平に水で書かれた「W-A-T-E-R」の文字..
そのときはじめて コトバというものを理解した..という あれ。
あれを 真似して サクに やったなぁ。。
サクの口に ドックフードを いっこ、 つっこむ。
で、サクの 妙にデカい前足の裏に ゆっくりと指で書く。
「D ・ O ・ G ・ F ・ O ・ O ・ D 」
「D ・ O ・ G ・ F ・ O ・ O ・ D .....
そして 同時に 耳の中に、しずかに ささやく。
「どーっーくーふーうーどーー...」
「どーっーくーふーうーどーー...」
「どーっーくーーー......
ふーーーむむむ... いま おもえば、
やはり あれで コトバというものを 悟ったのか??.....
ワタシが そう話すと うちのお客人さんは
なかば呆れた顔をして、
「ふぅぅぅ...アホですね...
はは。」
と しずかに 言った。
サクは たしかに けっこういろんなコトバがわかる。
でも、よく見ていると、
コトバをいっぱい覚えているというよりも、
たぶん彼女は ワタシの動作を いつも すごくよく 見ていて、
わたしの雰囲気や なにか言うときのちょっとしたクセを
とても上手に読みとって 反応してる..っていうところの方が
なんだか 大きいような気がする。
「ほんのちょっとした動作や そのときの空気や その場の雰囲気」から
とても多くの情報を読みとる感覚は、
人間にも 確実に 備わってるもんだと思うけれど、
ときとして ワタシタチ人間は、
そういう感覚が 全然機能してないみたいになっちゃってる時が
あるよなぁぁ..
もしかしたら そういうとき ワタシタチは
じぶんの中の 勝手な思いこみや
「コトバ」そのものや
「考えること」みたいな、
じぶんのアタマの中で起きてることの方ばっかりに 意識を すっかり囚われてて、
じぶんのなかに備わってる、
とても根源的で そしてナカナカ有能な この感覚が 教えてくれようとしてることに、
意識向けるのを 忘れちゃってるのかもしんないなぁ..
そんなことを ちょっと かんがえながら、
ふと 隣にいる サクを見る。
サクは いつもと同じ なにくわぬ顔で、
きょうも なんだかヘラヘラと わらいながら
ワタシのことを 見ていた。
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RolleiFlex
桟橋から ただぼぉっと
船の出入りを ながめているのが、
すきです。
たえまなく 出て行く船と
還ってくる船
しばらく ぼぉっと そこにいると、
かならず何人かのひとが 入れ替わり立ち替わり、
おなじように ただ しばらくの間
じいっとしずかに 海をみつめて、
そして しずかに 帰って行く。
海をみつめて じっとたたずんでるヒトの背中は
なんだか いろんなものを
しょってるみたいに 見える。
もしかしたら はんとうは ただ
「あー、あの雲 エビフライに 似てるなぁぁ..」とか
「さっき 電車で向かいに坐ってたねーちゃん
綺麗な足 してたなぁぁ...」
なんてことを
ぽおっと 考えてるだけなのかもしれないんだけれど。
海をみつめて佇んでるヒトの 後ろ姿は、
そのヒトそのヒトの 肩にしょってるものを
うっすら くっきり かいま見せてるようだったりして、
どんなひとでも それぞれがそれぞれに、
なんだか 味のある ひとつの絵に見える。
出て行く船 と
還ってくる船
何度も何度も 送り出す海
そして何度も 受け容れる海
ただ淡々と 送り出す海
そして スベテを 迎え入れる海
還ってくる ワタシが 誰でも
そのとき ワタシが なにを しょってても
ちゃんと わらって
「 オカエリ 」と
言ってくれるんだろうな
いつでも
「 オ ・ カ ・ エ ・ リ ・ 」
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BabyRollei
冷蔵庫を開けたら
目覚まし時計が はいっていた。
そういえば
きのうの夜から、
ないなぁと おもっていたんだ。
こんなところで 一夜を 越していたとは。
きのうの夜 目覚まし持ったまま かんがえごとをしていて、
そのとき じぶんでも気づかずに
冷蔵庫に いれたらしい。
そういうワケのワカラナイコトは
まれにある。。。
冷蔵庫の中に ちょんまりと収まってる目覚まし時計は
なんだかちょっと カワイイ気がした。
冷蔵庫の中で冷やされた
時間の流れは
すこぉしだけ ゆっくりになってたりして...
なぁんてことを ぼぉっと想像する。
きょうは ほんとにひさしぶりに
なにひとつ 予定の なぁんにもない 土曜日。
しかも もーさんもヒニャさんも
朝はやくから ではらっていて、
なんだか しずか。
予定を なんにも つくらない 土曜日。
しなくちゃならないことも、なぁんにもない 土曜日。
なにをしてても いい 土曜日。
じぶんに ゆっくりと おいしい紅茶を いれてあげる。
時間のながれが ゆっくり ゆたか。
じぶんの中にも まわりにも
そこを ゆっくり こんこんと
流れていくものがあって
なーんでもないけど なんだか ゆたか。
なーんにも ないことが
なんだか
ゆったり
ゆたか。
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RolleiCoad
くうきの 凛とひきしまる 深夜。
誰かが 突然 外から
玄関のノブを まわした。
がちゃり。
.........開かない。
あたりまえだ。
鍵 かけてあるもん。
瞬間的に 時計を見たら、
午前2時過ぎ。
誰かが 勝手に
うちに 入ってこようとしている...。
こんな時間に、 いったい 誰が???
ここで にわかに
背中のあたりに
戦慄が はしる。
得体の知れない誰かは、
こんどは ドアを無理矢理 開けようとして
ノブを がちゃがちゃ回しながら
すごい音たてて
ドアを 押したり引いたり しはじめた。
ガンガン ガンガン!!!
...たぶん 足とかも つかってる..。
......変質者??
このまま どっかから
押し入ってこられたら
どうしよう..??
カラダが 緊張してくる。
ドガドガドガッ!!
がちゃがちゃ がちゃがちゃ!!!
(汗。汗。汗。。。。)
その誰かは
数分ドアと 格闘しつづけ...
そのあと 急に 諦めたらしく.........
それから
しずかに 立ち去っていく 気配がした...
.....ほっ。
「ドアの向こう側にいるのは、
ジェイソンみたいな、超・怪人じみたやつで 、
ソイツは今、すごい形相で ドアを こじ開けようとしてる..
そして その片手には....
うう..やっぱり、チェンソー!!???」みたいな妄想に、
ズブズブに はいりこんでしまってた自分に 気づく..。
恐怖映画の 悪影響だなぁ...。
そのあと しばらく経って、
おまわりさんが やってきた。
その不明な人物は、
うちの並びの数軒の家に 順繰りに同じことを繰り返して、
通報されたらしい。
結局 ソイツの正体は わからずじまいみたいなんだけれど、
おそらく それは酔っぱらいさんだったみたいで、
「酔いすぎて じぶんの家がわからなくなって、
手当たり次第の家のドアを 開けようとして、
んで、どこも開かないので ヤケおこしてたらしい」..という、
オチは なんだか 気の抜けるようなモノだった。
どのドアも開かず
家のみつからない彼は
そのあと どこへ消えたのか....???
そういえば、ワタシは ずいぶんまえ、
ドアの いっぱい並んだ廊下を 歩いている夢を
見たことが あったなぁ
....なぁんてことを おもい出す。
その廊下から 外に出たいんだけど
どのドアからなら 外に出れるのかが 全然 わからなくって。
次々 ドアを開けていくんだけれど
開けても開けても 違うドア....
いつまでも 見つけられないドアを探し続けてる...みたいな、
なんだか そんな 夢。
おうちの みつからない酔っぱらいさんも
もしかしたら そのときのワタシと おなじような悪夢の中で、
必死になって 「ただしいドア」を
探してたのかも しんないなぁぁ。。
ふかい酔いに 連れていかれた、
意識の底の、果てしない夢の、
そのなかで。
あまりにも お騒がせな 深夜の酔っぱらいさんは
結局 「じぶんのための ドア」に
ちゃんと 行き着けたんだろうかにゃ。。。
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| COMMENT:6

BabyRollei
おつかいもので
綺麗なゼリーの 詰めあわせを
いただいた。
三越の包装紙で
包まれていた。
三越の包装紙の 模様を
しばらく ぼぉっと ながめていたら
もうずいぶんまえに 死んだおばあちゃんのことを
おもいだした。
おばあちゃんの家には
シーズーらしき わんこがいた。
「らしき」がつくのは、
あまりにも まるまる 太りすぎていて
もはや原型の 不明になった様相を していたから。
なまえは なんていったんだったか
なぜだか ちっとも 思いだせない。
おじいちゃんが 先に天国に逝ってしまって
おばあちゃんは 一人暮らしに なった。
そのころから おばあちゃんは、
しきりに こんなことを 言うようになった。
「このこ(←まるいぬ)、 さいきん ごはんを ちっとも
食べないんだよ。
年 とってきたから からだの どこかのネジが
はずれはじめてきたのかねぇ。。。
あああ、こまったねぇ、心配だねぇぇ。。」
おばあちゃんがそうやって心配するのと
まるで 反比例するかのように、
見るたびに まるいぬ氏は
その丸さと膨張率を 増していく。
謎。。。
まわりの人間が 事態を正しく理解できたのは
かなり経ってからのことだった。
飛んじゃいはじめていたのは、
まるいぬくんの カラダのネジじゃあなくて、
おばあちゃんのココロのネジのほう だった。
おばあちゃんは まるいぬくんに ごはんをあげても
しばらくすると あげたことを ぽっかりこんと 忘れはて、
そうして1日に なんかいもなんかいも
ごはんを あげるように なっていたのだった。
そして まわりのひとが なんだかおかしいと気づくころには
いちにちに もう 何十回も 何十回も..
食べても食べても
際限なく 出される ごはん..。
のこして 当然だ..
まるいぬが マルさを増幅していくのも当然...。
おばあちゃんは 間もなくして、
母を筆頭とした おとなたちの決定で、
老人ホームに 移された... 。
ホームに はいったあと、
おばあちゃんのココロの 残りのネジも
また どんどんと はずれ落ちていった。
おばあちゃんの記憶から ワタシもいなくなるまでの 数年間、
たまに 逢いに いくと
おばあちゃんは 毎回毎回、
こんなことを 言った。
「あら、たいへん!もう こんな時間。
アタシ、三越に 行かなくっちゃ!!」
そして ガバッと 立ち上がり、
焦ったように
出かけていこうと する。
おばあちゃんの 脳は、
どうしてそんなに なんかいもなんかいも
三越に行く場面ばかりを
リフレインしているんだろう..
なんだか ちょっと 不思議だった。
たくさんの たくさんの過去たちが
おばあちゃんの中で 風化して
崩れ落ちて 消えて なお、
そこだけは 妙にくっきりと
刻みついて残った その記憶は、
切羽詰まった ナニカの残照 だったのか
それとも シアワセな印象 だったのか
とおいとおい いつかのある日、
いとしいいとしい たいせつな 誰かと
三越のまえで 待ち合わせでも してたのかしらん。。
そんなことを おもったりした。
透明な器に盛った ぷるりんとしたゼリーの中に
三越の包装紙が くしゃくしゃ映って
その中を
まだ少女の顔の おばあちゃんが
可愛い水玉のワンピースを 着て
白いフリルの 帽子を かぶって
赤い ビーズのバックを もって
ほんのすこぉし 頬 染めて
小走りで
通り過ぎて 行く...
なんだか そんな
白昼夢を みた。
「アラ タイヘン。。
アタシ
ミツコシ ニ
行カナクッチャ。。」
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| COMMENT:8

BebbyRollei
にもつが山で 行き倒れそうなので
タクシーを ひろった。
タクシーの運転手さんは、
走りながら
なぜか ためいきを 連発していた。
しゅふふうぅぅーーっ。
しゅふふうぅぅーーっ。
あんまり なんかいも 連発しているので、
なにげに 言ってみた。
「なんか、ためいき ふかーいですね~。」
「あ、おれ、ためいき ついた??」
ははは。
本人 気づかないで
出してたらしい。
「じつは きょう ちょっと 凹んじゃっててねぇ~。」
「へぇぇ、なんかヤなこと あったんですかぁ??^_^」
なぁんとなく 話したいみたく感じたので、
ちょこっと軽く つっこんでみた。
「さっき 偶然ね、、
むかし つきあってた女に 逢っちゃったんだよ。。
そしたら、その女が さー、
めちゃくちゃ みすぼらしいかっこしててねー...
なんか雰囲気も みょーに 陰鬱としててさ...
どう見ても 不幸そうにしか 見えなくてさー。。。
それ見たら、
なんか そいつの不幸の一部は
おれのせいかな~
みたいなふうに おもえてきちゃって...
それから なんだか どーしようもなく
凹んでっちゃったんだよな、おれ。。。」
そんなことを しみじみ ぼやいた運転手さんは、
「話しちゃったことで ちょっと 軽くなった~」
とか言って、
そのあと すこぉし、「 はは」と わらった。
ふぅぅぅん。。。
なぁんとなく きもちは ちょっと
わかるような 気がした。
そして
同時に、
こんなことも おもった。
誰かが ほんとの意味で シアワセか 不幸かは、
たぶん ほんとうのところ
その本人にしか わからない。
そして、それが仮にもし 不幸だったとしても、
誰の じんせいも
「誰かや なにかのせい」 とかなんかじゃ
けっしてない と
おもうの、
きっと。
どんな現実も
「なんかのせいで こうなっちゃった、ただのわるいこと」なんかじゃあなくて、
「なんかの意味があって いま こう起こってること」なんだと
ワタシは おもいたいよ。
なんかね....ぜったい。
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| COMMENT:11

RolleiFlex
いまから ほんのすこしまえのこと。
ちょっとした取引の話しで
人に 会う機会が あった。
その人は 超スペシャルクラスの
おれおれくん だった。
2時間弱くらい 一緒にいたんだけれど、
そのあいだじゅう ずっと
じぶんの すごさについて
まるで 威嚇してるような態度で、
しかも なぜか攻撃的に聞こえてしまう口調で、
語り聞かせてくれた。
「ね? どうですかぁっ?
オレって ほんとに すごいでしょーうっ??
すごいと おもわないですか~っ??」
(つか、おもえっ!!)←圧力。ていうか、念??みたいな。
ワタシのハナシなんて
いっこも 聞きたいとは 思っちゃいないみたいで、
もう 口を はさむスキさえもなく、
延々2時間弱、
彼は じぶんのすごさを ワタシに語り続けてくれた。
.......しまいには 正直 ほんのちょっと
ぐえっと なってきちゃって、
たぶん それは、しっかり顔にも 出た。。。
取引の話しは
結局 諸事情合わずで 流れたので、
彼とは それきり会うことも なく、
そしてそのまま 日は 過ぎた。
そして、ここからは、
何日か前の おはなしになる。
サクと さんぽに出た 途中で 、
見知らぬチワワくんと 行きあった。
チワワくんは サクを見るや いなや
いきなり、超・臨戦態勢に。
すごい勢いで 歯をを剥いて
サクに ぎゃわっぎゃわ 吠えてくる。
吠えられてるサクは....
チラっとチワワくんを見たけれど ちいとも眼中にはなく、
いつもどおりの ヘラヘラした表情で
道ばたの草とかを はみはみしている。
チワワくんが 一生懸命 威嚇する。
サクは 「はー、 なんか 鳴いてますね~、
たいへんっすね~、ははは~、
あ~、草 ウマ。♪」 ってな 感じ。
はみ はみ はみ。。。
チワワくんが 必死になって 威嚇する。
サクは 「しら~~~ん。」
はみ はみ はみ。。。 ♪
このチワワくんはきっと、
じぶんのカラダがちいさいことで
「う、おれ、負けてんじゃ..!?」とか
「おれ、やつに ばかにされんじゃ..!?」みたく感じちゃって、
それで こんなに 虚勢張って 吠えてるわけね。
で、勝つとか負けるとか 劣るかもとか
そんなこたぁ まったく アタマにないやつは、
吠える必要 感じもしないと。
ふん ふん ふん。。
一生懸命必死になって ぎゃうぎゃう吠え続ける
そのチワワくんの すがたが、
ワタシの中で
なんだか いつかの おれおれくんと ダブって見えた。
2時間の間 ずうっとぎゃわぎゃわ 鳴いてた彼も、
もしかしたら じぶんの どっかに
すごくおおきな 自信のなさや 怖れを 、
きっと 抱えてるのかもしんないにゃあ。
だから 必要以上に じぶんの すごさを
誇示しつづけていることで、
ココロのバランス とっているのかもしれない。
「オレは、こんなに つよいんだぞぉぉー」
「オレは、こんなに すごいんだぞぉぉー」
わんわんわーーーーーん。
なぁぁんて。。
ワタシの記憶のなかで
ウザぁいだけのヤツみたくなって 残ってた
おれおれくんが、
なんだか ちょっとだけ
愛しく おもえた。
もし こんど又 どこかで出くわす機会が あったら、
そんときは もっと 優しい目線で
おれおれくんのことを 見ていられるような、
なんか そんな気も
したりした。
..........................................................
写真は、ヨコハマの
猫さん。
ひなたぼっこちゅう。
「なにがどうでも、われ関せず。ぐうう~♪」
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| COMMENT:2

BabyRollei
それは
ほんとに どうしようもないくらい
みすぼらしくて 貧相な
ぬいぐるみ だったの。
どのくらい みすぼらしいかって言うと、
ぬいぐるみって呼ぶのさえ おこがましいくらい
それは ちいさくて
けちくさくて
しょぼけていた。
でもワタシは
そのぬいぐるみが
ほんとにすごく すきだった。
どのくらい すきかっていうと
24じかんいつもいつも シャツのポッケの中に
その子を 隠し持っていたくらい
だいすきだった。
ワタシが小学生低学年だったころの
おはなし。
ある日 ワタシは
その子を トイレに
落っことしてしまったのだった。
しかも トテーモ最悪なことに
そこは 究極の どっぽんトイレで。
今ならぜったい ありえないような、
おそろしくて下を向けないくらいの 大きい穴が
ぱくりーんと 口を開けている、
「どっぽんトイレの極み」みたいな どっぽんトイレで。
ワタシの大切な その子は
穴から 数メートル下の
どろどろとした山の上に
みじめな かなしーい感じで 乗っかっていた。
ワタシは 過激に 騒いだ。
「とってぇぇぇ、だれかっっっっ」
でも、母をはじめとした大人たちは 誰も
これっぽっちも 相手になんか してくれなかった。
そりゃ そーだよね。。
だって、誰がどう見たって いっこの価値もないような
みすぼらしーーい しょぼーーいぬいぐるみだもん。
「あんなモノ」とってくれようなんて
誰ひとり 思いもしなくって 当然だ。
でも そのときのワタシには
それは「あんなモノ」なんかじゃ
ぜーんぜん なかったんだよね。
泣いたり わめいたり ヒスったりしていたら
パパリンさんが
しずかに トイレに あらわれた。
なにやらわからぬ ながーい箸みたいなシロモノを
手に持って。
どこからそんなもん みつけてきたんだろう。。
それはかなり 不可思議なシロモノだった。
パパリンさんは
かなりの時間 黙々と
そのくさ~いくさ~いトイレの穴に 顔をつっこみ、
そのながーい箸みたいなもんと共に 奮戦し、
他の大人に「そんなもん なんでひろうのよ」とか,、
「きたないから やめてよ」とか、
しまいには「不潔!」とか言われながらも
果敢な奮闘を続け、
最後には とうとうそれを
しっかり救出してくれたのだ。
おおお。
パパリンさんは
そのあとそれを ごしごし手洗いしてくれた。
せっけんの泡を ぶくぶくたてて
何回も何回も
ごしごしごしごし 洗ってくれた。
そして ワタシに かえしてくれた。
うすちゃいろの 消えないシミが いっこ、
ぼんやり のこっていたけどね。。
でも、ちゃんと せっけんの いいにおいがした。
ワタシは その茶色のしみのついた その子と
それからまた ずっと長い時間を
いっしょにすごした。
ソレは ワタシと ともにいて
ずっとワタシの そばにいて
ワタシを いつも
安心した柔らかいきぶんで
眠らせてくれた。
いつしか ワタシは おとなになって
その子を どこかに おき忘れ
パパリンさんも
もう この世には いなくなり...
そして いまになって
なぁんとなく 気づいた。
晴れの夜も 雨の夜も
いつもワタシのそばにいて
ワタシのコトを いつもほんとうに あったかく
包んで見守ってくれていたのは、
実は そのぬいぐるみソノモノじゃあなくて、
うすちゃいろのシミといっしょに
ぬいぐるみに ついて残った、
そのときのパパリンさんが してくれたコトの
「印象」だったのかもしれない。
いつもワタシと いてくれたのは、
誰が見ても なんの価値もないような
しょぼい しょぼーい ぬいぐるみを
トテモたいせつなモノを拾うように ひろい
トテモたいせつなモノみたいに 扱ってくれたことで
コトバじゃなしに でもしっかりと
パパリンさんが ワタシに伝えてくれた、
「ぼくは きみのコトを
トテモ たいせつに おもっているよ」 という
そんな「カンジ」だったのかもしれない なぁんて
いまになってから なんか そんなふうに
おもうんだ。
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TRUCKBACK:0
| COMMENT:12

誰かに 大切に そばにいてもらった時間ていうのは、
ほやっとやさしい記憶になって、
人のココロの中に いつまでも こんこんと
流れつづけていくもんらしい。
ふだん げんきなときは
思い出しもしなくても
なにかで ふっと落ち込んだり
生きてる元気がなくなったりしたときに
どこからともなく
それは ほわりと 立ち上がってきて
ワタシタチが
どーしようもないうちに
どーしようもないところまで
じぶんを 見捨てなくてすむように
ゆったり うしろに
それは イツモ イテクレルモノ に
なるらしい。
............................................
ヨコハマ周遊バス「あかいくつ」の某停留所で
バスを待ってた、なんかすごく なかよしな姉弟。
後ろから つつつつつつ、と忍び寄り、
うつしました。
(↑あやしい女。)
この日はトテモ風がつよくて、
コートの裾が
バッサバッサ言ってた。
少年は ずっとおねえちゃんに
後ろ手で がっしりと抱きしめてもらってて、
ふたりのまわりは なんだか まるで
風なんか ちっとも
吹いてなんかないみたいだった。
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TRUCKBACK:0
| COMMENT:4